林:いい弁護士さんに教えを請うたんですよ。

木村:そうだったんですね。政治や法律に関する記事でもそうですが、いろいろなことをごまかさないと話はわかりやすくならないので、制度や法律を丁寧に書くと、疲れるんですよね。ですが、リアリティーがあり、こんなに引き込んで読ませるのは、すごい力だな、と感じました。作品に出てくる1人目の弁護士さん、あまりやる気がないのもリアルだなと思いましたし……。

林:ありがとうございます。たとえば生活保護ひとつをとっても、日本人の特性というか、世間に恥ずかしいとか、お国に迷惑をかけたくないとかいう意識があって、法制度をうまく利用できていない人がたくさんいますよね。

木村:そうですね。身近な問題でも、もっと多くの人が、法や制度を利用すればいいのに、と私も思っています。

林:引きこもりや貧困に限らず、いじめや虐待もそうですよね。

木村:おっしゃるとおりです。あの作品を読んで勇気づけられる人が出てくるだろうと思いましたし、いろんな人に読んでほしいなと思いました。これからも法律を使った話を書いてください。

林:そう言っていただくと本当にうれしいです。苦労したかいがありました。今日はありがとうございました。

(構成/本誌・直木詩帆 編集協力/一木俊雄)

木村草太(きむら・そうた)/1980年、神奈川県生まれ。憲法学者。中学生時代から法律に興味を持つ。東京大学法学部、同大学院法学政治学研究科助手を経て、現在、東京都立大学大学院法学政治学研究科教授。著書に『憲法の創造力』(NHK出版新書)、『憲法という希望』(講談社現代新書)、『キヨミズ准教授の法学入門』(星海社新書)、『ほとんど憲法』(河出書房新社)、『憲法学者の思考法』(青土社)など。趣味は音楽鑑賞と将棋観戦。

週刊朝日  2021年9月17日号より抜粋

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