面白い人、ユニークな人に求心力があるのは、やっぱり余裕があるからだろう。そういう人のところに、みんな面白がって集まるよね。周りが興味示してくれて、金持って余裕のある人はどんなことしてるのか、のぞき見したくて、集まってくる。必死でやってる人、苦労している人には集まってこないでしょう。成し遂げた人のプライベートを見たくて集まってくるんじゃない。実は誰々は、俺だけが知ってるよって、優越感を持つって、それだけじゃないか。余裕があると誰が来ても拒まないからね。
俺自身、冗談を言ったりするのは大文字さんから受けた影響が大きい。俺がよく「あいつには味噌汁の一杯もご馳走になったことはない」というセリフを使うんだけど、これは大文字さんが言っていたセリフ。面白いこと言うな~と思って、俺も使うようになって、さらに最近では娘も使うようになった。
彼女は天龍の娘ということで声をかけられることも多く、知らない人からも「天龍さんとは、どこそこでよく呑んで~」なんてことを言われたりしていてね。そんなことを聞くたびに「うちの父がご馳走になりました? お世話になりまして?」と返すように俺は娘に指導している。これも大文字さんの詰め方で“角が立つ世渡り”の仕方だ(笑)。いやぁ、あれだけ付け人につくのが嫌だった大文字さんだけど、結局、嶋田家では彼からいろいろ受け継いでいるね。
(構成・高橋ダイスケ)
天龍源一郎(てんりゅう・げんいちろう)/1950年、福井県生まれ。「ミスター・プロレス」の異名をとる。63年、13歳で大相撲の二所ノ関部屋入門後、天龍の四股名で16場所在位。76年10月にプロレスに転向、全日本プロレスに入団。90年に新団体SWSに移籍、92年にはWARを旗揚げ。2010年に「天龍プロジェクト」を発足。2015年11月15日、両国国技館での引退試合をもってマット生活に幕を下ろす。