神戸市や山口県など6自治体でデジタル化推進のアドバイザー的役割を担う。この日は神戸市でのワークショップ。人の意見を否定しないというルールを設定するため、次々と意見が出る(撮影/東川哲也)
神戸市や山口県など6自治体でデジタル化推進のアドバイザー的役割を担う。この日は神戸市でのワークショップ。人の意見を否定しないというルールを設定するため、次々と意見が出る(撮影/東川哲也)

 テクノロジー業界では知られた存在だった関とCfJの知名度が一気に広がったのは、20年3月に立ち上げられた東京都の新型コロナウイルス感染症対策サイトによってだ。黒バックのものが多かったコロナ関連サイトの中で、都のサイトは白基調で緑を多用。シンプルなデザインと使いやすさがすぐに評判を呼んだ。受注からたった1日半で完成させたことも、驚きをもって伝わった。

「複数のベンダーに話を聞いた結果CfJに決まったらしいですが、僕たちは発注されなくても、感染者数などのデータが都から公開されるなら、自主的につくりたいと話していたんです」(関)

コロナで行政の課題が浮上
シビックテックが鍵になる

 関たちがこだわったのが「無駄に恐怖感を煽(あお)らず、優しさや安心感を得られる」デザイン。参加した人気料理アプリのデザイナーが1日で仕上げてくれた。こうした企業で働く“プロ”のエンジニアやデザイナーだけでなく、全国から高校生や大学生たちも全員がボランティアで参加し、最終的にその数は300人にも及んだ。

 それを可能にしたのが「オープンソース」と言われる手法だ。サイトやアプリの設計図に当たるソースコードは、通常企業や自治体は明らかにしない。自治体としては異例の開発手法を取ったのも、都のデジタル化推進のフェローも務める関が、以前からオープンソースの活動をしていたことと無縁ではない。

 都のサイトの影響もあり、CfJには様々な自治体から同様のサイトを作りたいという声が届いた。コロナで自治体の現場が逼迫する中で、それぞれがゼロから開発すれば無駄な予算と人員がかかる。出来上がったコードを誰もが無償で使えるようにしたことで、結果的に80もの自治体で使われ、その開発にはCfJの活動に参加したエンジニアたちがそれぞれの地域でかかわった。

 コロナによって日本の大きな課題として浮上したのが、デジタルトランスフォーメーション(DX)の遅れだった。紙やFAX中心の行政が給付金の遅れに繋がり、感染者数をリアルタイムに把握できないことが政策決定にも影響し、ワクチン予約も混乱した。

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