認可保育園ではどの時間帯にも保育士2人以上の配置が必要となるが、早朝や夕方の延長保育、土曜保育で1人しか配置されていないケースが目立った。開示された資料に保育士配置違反が常態化していると明記されている保育園と、常態化とは書かれていないものの違反状態が長く続いていると読み取れる保育園は合計30カ所だった。
中には「無資格者しかいない時間帯がある」と指摘された保育園もあり、事故や災害が起こったときの対応が懸念される。また、保育士の急な欠勤による違反は不可抗力とも思えるが、余裕のない人員配置が問題の根底にある。冒頭のA保育園の系列保育園の元園長はこう言う。
「子育て中の保育士が子どもの急病で休めば、ただちに配置基準違反に陥ってしまいます。それを防ぐため余裕のある人員体制をとっていたら、社長から『余剰人員は置かない』と人減らしを言い渡されました。異を唱えると、退職するよう命じられました」
人員を削った分の利益は、保育士たちに還元されているわけではない。
今年度から、国は公費で保育士1人当たりいくらの人件費(法定福利費や処遇改善費を含まない)を支出しているかの公表に踏み切った。それにより、国から保育園に入る人件費と実際に保育士が手にする賃金の差がわかるようになった。
過度な規制緩和保育の質が低下
公費による保育士1人当たりの人件費は東京23区が最大で、全員対象の処遇改善費込みで年464万円。キャリアに応じた処遇改善費がつくと、最大で年565万円の収入になる。人件費は配置基準の人数によって保育園に入るため、人員体制が配置基準どおりであれば、公費で出る満額を得ることも可能なはずだ。
だが、都内で配置違反が常態化している各保育園の常勤保育従事者の平均年間賃金を見ると、23区内で本来、全保育士が手にできるはずの464万円を超える園は3カ所のみ。人手不足のうえ、低賃金で働かされる保育士の苦境が浮き彫りになる。