西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、注目の投手たちについて語る。
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プロ野球界に若い投手が頭角を現してきた。9月7日の火曜日、セ・リーグではヤクルト・奥川恭伸、パ・リーグではオリックス・宮城大弥、日本ハム・伊藤大海、楽天・早川隆久の4人が投げた。原則6連戦の初戦となる火曜日の先発は、エース、もしくはそれに準ずる投手が投げる。そういった意味で、チーム内で入団1年目、2年目の選手が早くも確固たる地位を築きつつあると感じた。
この4人の投手に共通するのは、ピンチになっても慌てないといったところか。入団1、2年目で、ピンチでのギアチェンジを有している。そういった点を考えても、10年、20年前の20歳前後の投手よりも、投球を心得ているなと感じる。
映像の発達が寄与しているように思う。小さいころからいろいろな映像情報、野球の知識を身につける方法がある。中学生、高校生のときから、プロの一流投手が何を考え、ピンチでどう乗り切っているかを視覚的にとらえることができる。われわれがプレーした昭和の時代は、映像をコマ送りで見ることもできないし、手軽に映像も入手できなかった。そしてデータ。以前よりも数字で一目瞭然の細かなものがある。かつては対戦してみないと、肌感覚でしか得られないものが、今やデータとして得られる時代だ。
暑い夏に試合がある高校野球のエースは、どうやれば省エネ投球できるかも考えるだろう。一つひとつの要因が、今の投手の投球術につながっているように思う。勢いだけではない投球ができている。
星稜高校時代の奥川の投球を見たとき、このコラムで「投球術は高校生離れしている。ヤンキースの田中のような投手になれる素質を持っている」と書いた。フォームに欠点が少なく、体ができて、直球で空振りやファウルを取れる感覚を身につければ、勝てると踏んでいた。これで6勝目。長らく石川や小川に頼ってきたヤクルト先発陣だが、エースへ一歩ずつ近づいている。