チャットプラスのAIチャットボットを導入している星野リゾートの公式サイト(写真:星野リゾート)
チャットプラスのAIチャットボットを導入している星野リゾートの公式サイト(写真:星野リゾート)

 本格的な会話ではなく、商品やサービスの問い合わせなら、短文でもコミュニケーションが成立しやすい。通販サイトなどでチャット形式のサポート窓口を利用したことはないだろうか。応答にAIを活用した「チャットボット」のツールを提供しているチャットプラス(東京)によると、チャットを用いた企業の顧客サポートは、スマホの普及とともに増加したという。

「2011年ごろから、欧米で始まりました。特にアメリカでは英語が話せない人も多く、そういう人でも簡単に問い合わせできるツールとしてチャットが導入されたのです。弊社が日本でサービスを開始した16年は、チャットを活用しているのは外資系企業が中心で、日本企業はまだでした」(チャットプラスの三浦東平さん)

 企業がチャットボットを導入する大きな理由は人的コストの削減だ。あらかじめ決めておいたシナリオに沿って選択式で自動的に会話するものが主流で、対応しきれない場合だけオペレーターが対応することもできる。

電話、メール、チャットボットによる問い合わせの中で、チャットボットが3割を担う(写真:星野リゾート)
電話、メール、チャットボットによる問い合わせの中で、チャットボットが3割を担う(写真:星野リゾート)

「ネットのユーザーは、わからないことがあっても、わざわざ問い合わせの電話やメールをする人は多くありません。自動回答のチャットであれば、問い合わせの敷居が低くなります」(同)

 実際、チャットボットを導入したことで、問い合わせの件数や売り上げが数倍に増える事例は少なくないという。よくある問い合わせをチャットボットに任せることで、オペレーターによる対応件数が激減したという。

「文字でやりとりするチャットだと、どこにいても気軽に問い合わせできます。また、企業側も自動応答なら人手はいりませんし、オペレーターが対応する場合でも、1人につき同時に3~5件の問い合わせに対応できるのは、電話との大きな違い。それに、文字が履歴に残るのもメリットの一つです」(取締役・大江繭子さん)

 短い言葉のやりとりであるがゆえの、コミュニケーションの齟齬(そご)は生じないのだろうか?

「問い合わせをするお客さまと、お答えする企業という立場が明確ですので、不明瞭な点があっても、企業側は丁寧な対応を心がけますし、その場ですぐ確認することもできます。顔が見えない分、迅速に返信することで、安心していただけるようにしています。お待たせする場合でも、『5分お待ちください』と、時間を明確にお伝えするのがポイント。電話サポートだと、保留で延々待たされることになりますが、待ち時間がわかっていれば、お客様も他のことをしながらお待ちいただけます」(三浦さん)

 顧客と企業の双方にメリットが多いチャット形式のサポートは、今後も増えていきそうだ。(ライター・吉川明子)

週刊朝日  2022年11月25日号