難病患者就職サポーターは多くの場合、3年間の有期雇用なので、評判のよいところでも優秀な人が退職したとたん、サポートの質が低下してしまうことがある。
話を聞いていくと、支援現場での人材不足だけでなく、研修をはじめとする人材育成の仕組みがほとんどないこともわかった。
■営業の客先でトイレに行けるのか?
課題を抱える難病患者就職サポーター制度だが、少なくとも各都道府県に相談窓口は存在している。ところが、「学生の難病患者の場合、ぼくがやっているようなところを除けば、就職相談ができるところがほんとうにないんですよ」と中金さんは言う。
「大学のキャリアセンターは一般学生の就活サポートのみだし、難病患者就職サポーターのいるハローワークも、大学生の新卒採用には対応していない。だから彼らは『福祉の谷間にいる』と言われる。そんなわけで、ぼくが少しでも受け皿になろうと思ったのです」
大学生の難病患者の場合、就労経験がないことが大きな壁となるという。
「小中高、大学と、進学しても在学中の段差はあまり大きくない。でも、社会人になるときのギャップは大きい。『ほかの人はどうしているんだろう』と、実際に難病を抱えながら就職した先輩を招いて座談会をしたりして、情報を提供しています」
そこで出る質問は、一見たわいもないようなものでも、本人にとっては深刻な問題だ。
「日本企業の場合、どこに就職してもまず営業にまわされることが多い。潰瘍性大腸炎の患者だと、車で移動する際にトイレに行きにくかったらどうしよう、上司と一緒でもトイレに行くことを理解してもらえるだろうか、お客さんのところではトイレに行きたいと言えないかもしれないとか。みなさん、経験が少ないがゆえの不安があるのです」
■無理に言う必要がない場合も
さらに新卒採用の場合に大きな不安を感じるのが、企業に対する病気の開示だ。