難病患者を支援する中金竜次さん(写真=本人提供)
難病患者を支援する中金竜次さん(写真=本人提供)

 難病であることを開示したうえで就職すれば、通院などの配慮が受けられるようになり、何より、職場環境がよくなることで精神的な不安がやわらぐ。

 2013年、厚生労働省は増え続ける難病患者の求職に対応するため、各都道府県のハローワークに「難病患者就職サポーター」を配置した。サポーターは難病疾患についての専門的な知識はもちろん、労働法規をもとに患者をサポートし、さらには企業の採用担当者と交渉も行う。中金さんも神奈川県でサポーターを経験し、2年前に現在のネットワークを立ち上げた。

■知識と胆力が求められるサポーター

 制度開始から8年、中金さんは「この制度はうまく機能していない」と指摘する。

「地域ごとの実績のばらつきが非常に大きくて、相談件数も就職率もぜんぜん違う。実際、窓口を利用した難病患者にアンケートをとると、サポーターが疾病特性を踏まえて非常に丁寧にアドバイスしている地域がある一方、クレームが非常に多いところもあるのです」

 その原因について、中金さんは「サポーターは多くの場合一人体制のため、その人の能力によって大きく左右されるから」と説明する。

 全国に配置された難病患者就職サポーターは51人。そのうち、2人体制は北海道、東京都、神奈川県、大阪府のみで、残りの43府県は1人体制だという。

■優秀なサポーターが退職すると一変

「私が神奈川県でサポーターをしていたときはあまりにも忙しかったんです。相談は1人約1時間、1日5枠くらい。ところが相談が増えて、最大9枠とか、尋常ではない状況になってしまった。それでも患者さんからの相談を断ることはできないので、1カ月、2カ月と、相談を待っていただく状態になりました」

 一方で「相談者がいなくて、当日の予約さえも埋まらない県もある」と言う。

「患者が希望すれば、事業者に対して病気のことをきちんと開示して、一定の配慮が得られるようにして就業につなげるのがサポーターの任務です。ところが、単なる説明だけに終始して、『開示は自分で行ってください、と伝えられた』という患者の声も聞く。その方は、『もう、行きません』と、相談窓口から離れてしまいました」

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