臨時総務会を終え、岸田新総裁(左から3人目)を中心に写真に納まる党役員たち/10月1日、東京・永田町の自民党本部(c)朝日新聞社
臨時総務会を終え、岸田新総裁(左から3人目)を中心に写真に納まる党役員たち/10月1日、東京・永田町の自民党本部(c)朝日新聞社
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 自民党新総裁は岸田文雄氏に決まった。党役員人事を見ても「安倍・麻生」の影響は明らかだ。今後の政権運営はどうなるのか。AERA 2021年10月11日号から。

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「総理にはさせてやるから、人事には手を出すな」

 まるで、麻生太郎財務相と、安倍晋三元首相との密約があったかと勘ぐらせるような、ある意味で分かりやすい「人事」になるのではないか。党内では専ら、党三役と4日に発表される内閣の顔ぶれについて、そんな臆測が飛び交っている。

 9月29日に誕生した岸田文雄自民党総裁。党の要となる「幹事長」と「政調会長」のポストは、岸田新総裁の党運営のあり方を内外に示す、重要な人事だ。特に総選挙を前に、「公認権」と「カネ」を握る「幹事長」という党内の最大権力者は誰になるのか。自民党員は固唾(かたず)をのんで見守った。

 抜擢されたのは甘利明税制調査会長。今回の総裁選は甘利氏が所属する麻生派の動きが勝敗を決した。つまり、麻生派所属の議員が、同じ派閥の同胞である河野太郎行政改革相を支持するか、それとも、派閥の違う岸田氏を支持するか、自主投票という形で分かれたのだ。結果は、麻生派を率いる麻生財務相を始め、多くの議員が岸田氏に流れた。ある麻生派の若手議員の一人はこう証言する。

「甘利さんが岸田さんの選挙対策本部の顧問になったことで、これは何をかいわんやでした。そもそも麻生さんが、同じ派閥の河野さんではなく、岸田さんを支持したのですから。河野さん本人というよりも、河野さんの向こう側にいて敵対する石破茂元幹事長には、絶対に権力は渡さないという凄まじい執念を感じました」

■安倍氏の号令で直電

 ある野党幹部は、「甘利幹事長」人事をこう分析する。

衆院選挙を前に二階俊博前幹事長がやり残した、例えば未調整の選挙区の公認問題など、後任の幹事長には相当の調整力が必要となる。かつて第2次安倍政権で環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉役として、米国と渡り合った甘利氏は、その意味では適任。嫌な相手となる」

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