このため、市中経済はほぼ正常化し、9月からは1年半ぶりに待望のブロードウェイのミュージカル劇場も再開した。ただし、チケット購入の際にワクチン・パスポートの入力が必須だ。米疾病対策センター(CDC)は、ワクチン接種が完了した人は屋外でマスクを着用しなくてもいいというガイドラインを設定しているため、マンハッタンの中心ではマスクをしていない歩行者がほとんどだ。
また、ニューヨーク州は、医療従事者に対し9月27日までに1回目の接種を終えることを義務づける行政命令を出した。ニューヨーク市によると、市内の11の公立病院の医療従事者4万3千人のうち5千人が未接種で、失業保険なしで解雇される見込みだという。
ロイター通信によると、州内最大手のノースウェル・ヘルス病院(従業員7万6千人)は数百人の従業員の停職あるいは解雇の手続きに入ったとみられる。スポークスパーソンはこう話した。
「州内で最大の医療機関のプロとして、患者と社員お互いの健康を守るため、私たちには特殊な責任があることを理解している」
ニューヨーク州のキャシー・ホークル知事は同時に、医療機関での大量の解雇で、現場が混乱に陥らないように、他の州やフィリピンなど海外からワクチン接種済みの専門職を調達する計画を立てている。しかし、これには「1年以上にわたり、命をかけて新型コロナ患者を看病してきた州民に冷たい措置だ」という批判の声が上がっている。
ワクチン未接種が、失業につながる、つまり「死活問題」になるという例は、全米に広がっている。バイデン米大統領は、100人以上の企業は従業員に対し、ワクチン接種、あるいは週ごとのPCR検査を要請する方針を発表した。この措置は、全米の労働者1億人に影響がある。これに先立ち、連邦政府の職員と契約事業者には、ワクチン接種を義務化した。
企業は、1件の違反に対し、1万3600ドルの罰金が科せられるため、フェイスブックやマイクロソフト、グーグル、ウォルト・ディズニー、ユナイテッド航空、鉄道大手アムトラックなどは、ワクチン接種の義務化を次々に発表。AP通信によると、ユナイテッド航空は9月28日から未接種の社員593人の解雇に着手した。