「高血圧との関連が一番大きな問題。日本人の血圧はすごく高く、脳卒中は1960年代がピークで、死因のトップだった」(三浦さん)
早渕さんは、寝たきり介護の6割に高血圧の問題があると指摘する。
WHOが食塩摂取量を1日5グラム未満に推奨しているのは「血圧が高くなることを一番の目安にしている」(三浦さん)。ただ、国際的に達成している国は多くないとも。日本は5年ごとの見直しで徐々に下げ、当面の目標は男性7.5グラム、女性6.5グラム、高血圧の人で6グラムとしている。
「医学的にとりすぎ」(同)とされるほど、日本人が塩分をとってしまうのはなぜなのか。
「日本は湿気の多い風土で、冷蔵庫のない時代から、防腐の目的で塩を使ってきた。浸透圧による脱水作用で塩は細菌の増殖を抑える効果がある」(早渕さん)
さらに、日本料理は味つけなどに塩分が多く使われる。
「日本人は文化的にしょうゆや味噌を使ってきた。調味料として、塩は飽きることがない味。うま味成分のグルタミン酸だけではおいしく感じず、適量の塩が味を引き立たせる」(同)
塩には食品の物性を変える効果もある。かまぼこやハムなど、塩の働きで弾力性が出てくる。パンや麺類は塩がないと、小麦粉のなかでグルテンが形成されず、弾力性や伸展性が出てこない。
「加工食品では塩が重要な役割を果たしている。日本料理は歯ざわりも大事で、塩が大きくかかわっている」(同)
このほかにも、塩の役割は多い。「ほうれん草などの青ものをゆでるときに、塩を入れると酵素作用を抑制する。りんごを切ると変色するのが酵素作用です」(同)
普段の食生活に、塩は欠かせない。テレビで料理番組を見ると、必ずといっていいほど、塩少々と出てくる。少々でも、使用頻度が高い。
塩分の過剰摂取をどう抑制すればいいのか。「減塩と同時にカリウムの摂取を増やすことも大事」(同)。カリウムにはナトリウムとともに体内で細胞の浸透圧を維持するなどの働きがあり、腎臓でのナトリウムの再吸収を抑制し、尿への排泄を促して血圧を下げる。例えば、塩化ナトリウムと塩化カリウムは分子構造が似ており、後者にも塩味があるという。
「食品会社では塩化カリウムに置き換えても変な味にならないように工夫している」(同)