※写真はイメージです(写真/Getty Images)
※写真はイメージです(写真/Getty Images)

 歯がグラグラになるということは歯槽骨(歯の土台となるあごの骨)がなくなっているということで、こうしたケースには歯周病を中心とした細菌による歯周組織の炎症がかかわっていることが、スウェーデンのイエーテボリ大学の研究などによって証明されています。

 このため、バネのかかっている歯がグラグラになっている場合、歯科医は「その歯が歯周病になっている」と考え、診断をおこないます。

 とはいえ、患者さんからすれば、「そんなことは知らなかった!」というのが本音でしょう。

 これは当然だと思います。なぜなら部分入れ歯を作る段階で、バネをかける歯はプラークをきれいに取り除きますし、歯周病があった場合、きちんと治療をおこない、健康な歯になった状態で部分入れ歯を装着するからです。

 つまり、グラグラになる理由はその後のケアにあるのです。

 部分入れ歯を装着した後は、寝る前に入れ歯を取り外し、毎日、洗浄をおこなう必要があります。その一方で、自分の歯もきちんと磨かなければならない。これはなかなか大変です。

 また、歯周病はむし歯と違って見た目にはわかりにくく、進行するまで痛みなどの自覚症状がないことも、歯周病の兆候に気づきにくい理由です。

 こんなケースがあります。

 70代のある女性患者さんは、10年ほど前にある歯科医院で部分入れ歯を作りました。以来、ほとんど通院をしないまま、「最近になって、入れ歯がグラグラしてかみにくくなってきた」と、来院されました。

 口の中をみると、自費で作った金属床の立派な入れ歯が上下に入っていました。残っている数本のご自身の歯にバネがかかった部分入れ歯です。

 入れ歯の不具合の原因は、まさにバネのかかった歯にありました。

 ほとんどがきちんと磨けていない状態で、プラークがたくさん付着し、歯周病が進行して歯ぐきが赤く腫れていたのです。X線検査をおこなうと、歯槽骨はほとんど残っていませんでした。すでにバネのかかった歯はグラグラしています。入れ歯を支える歯がダメになっているので、入れ歯自体もグラグラしてきたというわけです。

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