御船印は船会社の船舶が発着するターミナルや船内売店で頒布される(地球の歩き方編集部提供)
御船印は船会社の船舶が発着するターミナルや船内売店で頒布される(地球の歩き方編集部提供)
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 お寺や神社でもらえる「御朱印」に船バージョンが登場した。その名も「御船印」。地球の歩き方編集部が手掛ける公式ガイドブックでは御船印のバリエーションや参加社マップのほか、船の種類や地域別の船旅の楽しみ方などを徹底紹介しているという。AERA 2021年10月18日号では、新たな船旅のスタイルを関係者に取材した。

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 各地の船会社が船や航路ごとに独自に発行する「御船印」。一般社団法人日本旅客船協会の公認事業として4月にスタートした。船の印を集めるための旅を「御船印めぐり」と名付けたのは、同協会の船旅アンバサダー・小林希さん(38)だ。

「船に乗ることを目的に旅先を決める。そんな旅行をする人たちが出てきてもいいんじゃないかなと思いました」

 小林さんは大の旅好き。学生時代は沢木耕太郎の『深夜特急』や藤原新也の『印度(インド)放浪』を読み、海外を漂泊した。旅の魅力を伝える本づくりをしたくて、就職先のサイバーエージェントでは出版事業の立ち上げにも関わった。仕事にやりがいを感じたが、忙しくて自分が旅に出る時間がない。渇望が抑えられなくなった29歳の時。退社した日の夜、愛用の一眼レフを手に世界放浪の旅に出た。

■船旅の見送りに感動

 約1年間でアジアやヨーロッパ、北アフリカを回った。現地の人と仲良くなり、自宅にしばらく住まわせてもらったことも。帰国後、旅の体験をつづった著作を刊行。執筆中も南米大陸を3カ月間めぐった。

 放浪中にの写真を撮り続けていたという小林さん。国内も旅するようになり、「猫と出会えそうな場所」として浮かんだのが島だった。「海外でも猫がたくさんいる所って人もやさしく、穏やかな印象があったので行きたいなと思いました」

 讃岐広島という瀬戸内海の島を訪ねたのが2014年。島の人たちが過疎化や高齢化と向き合っているのを知り「何とかしたい」と考えた。古民家を宿として再生するプロジェクトを有志で立ち上げ、毎月、島に通って交流を深めた。船と密接に関わる島の文化や歴史も学んだ。

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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