蛇腹式の公式船印帳(1980円)も販売している。オリジナルの印帳を発行している船会社も(地球の歩き方編集部提供)
蛇腹式の公式船印帳(1980円)も販売している。オリジナルの印帳を発行している船会社も(地球の歩き方編集部提供)

 一番感動したのは、フェリーで島に到着するときと帰路に就くとき。島の人たちが港に迎えに来てくれ、帰りは船が見えなくなるまで見送ってくれた。その姿は、世界を放浪していたときの感動に勝るものがあった。

 日本旅客船協会と日本政府観光局の事業で、日本の離島を海外に紹介する取材をしたのがきっかけで、19年11月に協会のアンバサダーに就任した。離島をめぐって「御朱印」を集める人、航海や海上安全を祈願する神社が多いことに気づき「御船印」のアイデアを思いついた。「船バージョンの御朱印があればそれが旅の目的になり、乗船者が増えれば航路の存続にも寄与できると考えました」

 御船印の参加社は、北海道の利尻・礼文島から沖縄の八重山諸島の船会社まで59社(9月時点)。コロナ禍で船舶業界も一層厳しい状況に置かれている。

■40社集めると「船長」に

 地球の歩き方編集部が手掛ける公式ガイドブック『御船印でめぐる全国の魅力的な船旅』(学研プラス刊・1650円)も8月に発刊された。担当の日隈理絵さん(38)は御船印のバリエーションをアピールする。

「それぞれの土地や船の個性を凝縮したこだわりのデザインが御船印の魅力です。船旅といえば豪華客船みたいなイメージがあると思いますが、生活航路や遊覧船などいろんな種類があることも紹介しています」

公式ガイドブック(1650円)で御船印のバリエーションや参加社マップ、船の種類や地域別の船旅の楽しみ方などを徹底紹介
公式ガイドブック(1650円)で御船印のバリエーションや参加社マップ、船の種類や地域別の船旅の楽しみ方などを徹底紹介

 御船印は、ターミナルのチケット窓口や船内で買える。300円から。20社分をめぐると「一等航海士」、さらに40社分集めると「船長」の称号が得られる。4カ月間で約1万3千枚の御船印を販売した。「船旅をしてみると、知らなかった景色や人に出会える再発見があると思います。最近は船内にプラネタリウムや露天風呂がある客船も。船自体も楽しんで」(小林さん)

(編集部・渡辺豪)

AERA 2021年10月18日号

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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