岡山に行った折には、ぜひとも秘伝のドミグラスソースで味わいたい。
このようにローカルカツ丼のほとんどはタレ(ソース)が独創的なわけだが、カツに独自のトッピングをして供する地域がある。沖縄だ。
醤油味のカツの上(カツとご飯の間の店もある)にのるのは、野菜炒め。
今回の取材では、いつどの店が始めたのかはわからなかった。そこで、野菜の具が多いと評判の沖縄市「ハイウェイドライブイン」2代目の仲宗根朝一さんに聞いてみた。
「うちは父の朝助が、復帰の年(1972年)に開店しました。ご飯の上に本土と同じ甘辛い味付けのカツをのせ、その上にタマネギ、キャベツ、ニンジン、白菜、ピーマン、小松菜、モヤシの野菜炒めを卵でとじたものをのせています。開店当時からこのスタイル。父は『おいしくて健康的な食事を労働者にたくさん食べてもらい、経済発展してほしい』と具だくさんの料理を出していました」
野菜たっぷりカツ丼は、沖縄の発展を支えてきたに違いない。
誕生から今年で100年。カツ丼は日本人の食欲を満たし全国の人を笑顔にしてきた。蛇足だが本誌「週刊朝日」は来年創刊100年を迎える。カツ丼のように末永く、人々の知識欲を満たし続けていきたいものだ。(本誌・菊地武顕)
※週刊朝日 2021年10月22日号