指名直後は「開幕1軍に入れるよう頑張る」と入団に前向きだった開田だが、指名後の交渉でも契約金ゼロの条件が変わらないということが事前によく伝わっていなかったのが、ボタンのかけ違いを生んだといわれる。

 話し合いは平行線を辿り、12月7日、オリックスは獲得を断念。25歳の開田は、結果的に最初で最後のプロ入りのチャンスを逃した。同年は1位・内海哲也(現西武)が入団拒否しているので、繰り上げて4位相当にするなど、融通を利かせることはできなかったのだろうか?

 現在の育成枠とは異なり、年齢的に猶予のない大学、社会人選手を球団側に都合の良い条件で大量指名する方式は、ファンからも「無責任では?」と非難の声が上がり、「本人にとっても、チームにとってもメリットがない」という理由から、わずか3年で廃止されている。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2020」(野球文明叢書)。

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久保田龍雄

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久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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