エッセイスト 小島慶子
エッセイスト 小島慶子
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 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

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 皇室制度という大きなイエ制度が今も残る日本。この選挙期間中に注目のカップルの結婚が予定されているのは、象徴的な出来事といえるでしょう。他人の恋愛や結婚にこうまで口を出し「あるべき形」を押し付けようとする社会でいいのか?と改めて問われている気がします。 

 今回の選挙で注目されている課題に「選択的夫婦別姓制度」と「同性婚」があります。これらを認めようとしない人たちの多くは、“伝統的な家族の形”が崩れることを懸念しています。夫婦が同じ姓になること(ほとんどの場合は女性が男性の姓になること)、異性愛のカップルのみに結婚が認められることが「あるべき家族の形」を守るという発想は、個人の尊厳や自由よりもイエの形を優先する価値観の表れです。

 皇族の結婚について、国民なら何を言ってもいいという勘違いも、皇室を大きなイエと捉え、納税している自分はムスメやそのムコの結婚を決める権限があると考えるから。

10月31日に投開票が行われる衆院選では、「選択的夫婦別姓」や「同性婚」といった課題も注目されている(撮影/写真部・高野楓菜)
10月31日に投開票が行われる衆院選では、「選択的夫婦別姓」や「同性婚」といった課題も注目されている(撮影/写真部・高野楓菜)

 ムコがどんなイエの出かを詮索し、カップルの当人たちを決して個人として見ようとしません。

 他人が誰と結婚しようと、その夫婦が異なる姓を名乗ろうと、同性カップルだろうと、自分の人生には無関係です。家族の形が崩れることを心配するなら、他人の結婚に口を出すより、自分と家族との関係を見直した方がいいでしょう。同じ姓を名乗っていても、完全に心が離れている夫婦や親子はいくらでもいます。異なる性の夫婦で、愛情のない関係もいくらでもあります。

「家族の形」を守ることに躍起になるのは、自由を求める個人がどれだけ声を上げても出られないよう、イエというカタチの中に閉じ込めておけばうまくいくという発想です。

 人は皆、個として尊重され、選択の自由があり、幸せになる権利がある。それが当たり前の世の中になりますように。

小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。『仕事と子育てが大変すぎてリアルに泣いているママたちへ!』(日経BP社)が発売中

AERA 2021年11月1日号