そんなわけで、「自分なりに考えながらバタフライガーデンの草刈りをしています。草を刈ったためにチョウがいなくなったら困るし。逆にそのままにして伸び放題にすると、意外とダメだったりする。チョウに影響が出ないときに草を適切に刈ることが大切」。
海野さんがいちばん大事にしているのは準絶滅危惧種のヒメシジミ。環境がかなり安定していないと生きていけないチョウだそうで、アトリエの周囲2キロ圏内にはまったく見られないという。
「このヒメシジミをターゲットに草を整備しています。幼虫の食草のある安定した草むらを保全している」
■「カメラ、ないなあ」
春から初秋にかけて、1日、2~4時間ほど草の手入れをするというので、かなりの手間だ。
「道沿いの部分は草刈り機を使いますが、基本は手作業。つまり、取捨選択して、いい草は残して、悪い草は減らす。特にオオブタクサとか、どうしようもない植物は見つけ次第、抜く。でないと、あっという間にはびこってしまいますから」
話を聞くと、毎日、草むしりばかりしているようだが、チョウの撮影は庭の手入れをしながら行っているという。
「草刈りのとき、カメラを持って行って転がしておく。で、何かが来たら撮る」。ところが、「地面にカメラを置いておくと、すぐに忘れちゃうんだよ(笑)」。
「この間も夕方、(カメラ、ないなあ)と、気がついて。(そういえば、さっき、あそこで)と思って行ったら、敷地内の道の上にあった。そこを車で走っていた。カメラの背が低いので、ぜんぜん問題なかったですけど。しばしばそういうことが起こる」
海野さんは同じ場所でずっと撮るのが好きだそうで、いまの生活は非常に自分に向いているという。
「海外に出かけると、せっかく行ったのでしゃかりきになって撮るじゃないですか。でも、小諸にいると、まったく違う。それと正反対な生活をしている。だから、ちょっと、マズいな、と思うんだ。このまま認知症になって終わりか、という(笑)」
(文・アサヒカメラ 米倉昭仁)
【MEMO】海野和男「蝶・舞 2019-2021」
オリンパスギャラリー東京 10月28日~11月8日