自身2度目となるアイスショー「BEYOND」の全国ツアーが3カ月目を迎えている浅田真央さん。座長として、スケーターとしてショーにかける思いを語った。AERA 2022年11月14日号から。
【写真】蜷川実花が撮った!AERA表紙を華やかに飾った浅田真央
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――10月、早朝から練習に現れた。いつもと同じように左足からスケート靴を履いて氷に降り立つと、呼吸と体の動きを一体化させて、ゆったりと滑り始めた。
曲かけが始まると一転、多彩なフットワークと、全身から情熱があふれるようなスケーティングで世界観を創り上げていく。
「真央さん」と声をかけられると、彼らの練習を見てアドバイスをする。数多くのスタッフを率いるアイスショーの座長、浅田真央の姿がそこにはあった。
2017年4月に現役引退し、アイスショー「浅田真央サンクスツアー」を開催した。3年をかけ、全国202公演を滑りぬいた。
■想像より限界はない
浅田真央(以下、浅田):サンクスツアーは、選手の時に応援してくださった皆さまに、自分自身で感謝のすべてを届けるという、温かい手作り感のあるショーでした。自分の選手時代の曲を何十曲も滑ることがコンセプトでした。
あのときはこれ以上できない120%の力を出していたけど、自分が想像するより限界はないんだな、と感じたんです。
――ツアー後、農業や料理など趣味の時間を大切にしていたが、すぐに氷への情熱が戻ってきた。
浅田:選手のときと同じで、やるからには常に高みを目指して、自分を超えていきたいという思いで今回のショーの計画が始まりました。キービジュアルを黒とゴールドの強いイメージにして、自分にプレッシャーをかける意味でも「超える=BEYOND」というテーマを設定したんです。
――まず着手したのはメンバーの選定だ。前回同様オーディションを行いスケーターを選出したが、今回はスケーターの性質を見極めた。20代が中心で、アイスショー未経験のスケーターもいる。
浅田:サンクスツアーを見て、本当にたくさんの人が応募してきてくれました。オーディションでは、曲を聴いて即興で自由に踊ってもらうという審査を取り入れました。自分の表現ができていたり、自信を持って楽しく滑っていたり、恥ずかしがらずにアピールしていた人を選びました。ショーはお客さんにどう満足してもらえるかだと思うので、技術だけでなく、対応力や度胸も大切です。自分の意思がしっかりしているメンバーが揃ってくれたと思います。