◆中道支持層の票 維新に流れる
一方、政治ジャーナリストの野上忠興氏はこう見る。
「自民と同様、立憲も人材不足ですが、最も無難と思えるのは長妻氏ではないでしょうか。弁舌、物腰がソフトで、野党の党首らしくない味を出せるかもしれません。立憲の硬直したイメージともダブらない。だからこそ、長妻氏は激戦の東京でも安定した戦いができていると思います」
代表選で争点になるのは「世代交代」とともに、共産党との野党共闘のあり方だろう。小川氏や大串氏は基本的に継続する立場とされる一方、泉氏は「衆院選の結果を踏まえ、再検討するのは当然だ」としている。麻生太郎氏が「立憲共産党」などと揶揄したことについて、野上氏が指摘する。
「与党は時代錯誤的な共産党攻撃をしていましたが、それに有権者が乗せられてしまった側面もあります。立憲がイメージチェンジに成功すれば、来年の参院選で揺り戻しが起きるでしょう」
野上氏によれば、自民は単独過半数割れも予想されたことから、全国自治体の首長や、企業・団体を総動員し、かつてないほどのテコ入れをしたという。その状況下で、立憲は全体で14議席減らしているが、選挙区に限れば9議席増やし、僅差で敗れたところも少なくなかった。しかし、比例区では23議席も減少した。
一方で、日本維新の会が躍進したのは、中道支持層の票が流れたとの見方がある。伊藤氏が言う。
「自民と立憲の間に広大な空白地ができて、行き場のない無党派層の票が維新に投じられたのだと思います。立憲が左に寄ったという印象を持たれすぎたのが要因で、維新が固定的な支持層を獲得したわけではない」
野党共闘を支援する「市民連合」の運営委員を務める山口二郎・法政大学教授はこう話す。
「自民の牙城は堅固ですから、よくここまで戦ったというべきです。野党が選挙協力していなかったら、もっと議席を減らしていたはずです。自民は今回、野党共闘に恐れをなしたから、ことさら野党共闘の失敗を喧伝しているのです。野党もメディアもそれに乗せられてはいけない」
(本誌・西岡千史、亀井洋志/AERA dot.編集部・今西憲之)
※週刊朝日 2021年11月19日号