投打で活躍したエンゼルスの大谷
投打で活躍したエンゼルスの大谷

 メジャーリーグは、日本よりさらに過酷だ。

「米国東海岸と西海岸の時差は約3時間。ロサンゼルスからニューヨーク側へ向かうと時間が3時間早まります。デーゲーム・ナイトゲームの違いを考慮すると、最大7~8時間勤務時間が変わります」(徳山教授)

 これは朝出勤と夜出勤の違いに等しく、1日の生活リズムはますます不規則になる。徳山教授はこう続ける。

「睡眠とは本来、時間だけではなく、規則正しく眠ることも大事。大谷選手の職場ではそれが非常にやりづらいです。時差ボケは1週間以上続くこともあり、野球選手は体が慣れる前にまたホームに戻ってきてしまう。半年にわたって毎週7~8時間も揺さぶられれば、体は絶対バテます。40年近く集計した米アメリカンフットボールの統計でも、東海岸のチームが、西海岸に来てナイトゲームをすると成績が悪いという数字が出ています」

 不規則な生活リズムを強制されるメジャーの環境で、しかも、誰も経験したことのない「二刀流」でシーズンを戦い抜いた大谷。徳山教授は、「この悪条件で結果を出すのはすごい。まさにスーパーマン。テレビで見ているかぎり、メンタルも交代制勤務の影響は強く受けているようには見えません」と驚嘆する。

 過酷な条件下で結果を出した原動力の一つは、やはり「寝る力」なのかもしれない。前述の「Number」のインタビューで、大谷はこう証言している。

「ナイターデー(ナイトゲームの翌日がデーゲーム)なら6、7時間寝られればいいほうかなという感じですけど、ナイターナイターだったら、10時間から12時間くらいは寝ています」

 睡眠導入剤などは使わず、「寝ていいと言われたら、いくらでも寝られます」というから筋金入りだ。これだけ眠るのはかなり難しいことだと、前出の西野教授が語る。

「いくら寝てもいいという条件下でも、元来は自分が必要とする以上は眠れないもの。習慣的に1日10~12時間眠るのは難しいです。一部論文のデータでは、日本人で10時間以上寝ている人は4.3%とあります。12時間以上になるとさらに少なくなり、1%程度ではないかと考えられます。それらの人がすべて、健康かどうかわからないので、健康なロングスリーパーはそれより少ないことになります」

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