大谷の睡眠の特徴の一つが、「つねっても叩いても起きない」という熟睡ぶりだ。大谷を追いかけたノンフィクション『道ひらく、海わたる~大谷翔平の素顔~』(佐々木亨著・扶桑社文庫)の中で、母の加代子さんはこう語っている。
「幼稚園や小学校の低学年ぐらいまでだったと思いますけど、学校から帰ってお友達と外に遊びに行く翔平は、夕方に家に帰ってくると体力を全部使い果たしている感じで、ソファで寝てしまうことがよくありました。私が夕飯の支度をしていても、まったく起きない。寝始めると本当に起きなくて。結局、お父さんに寝室まで運んでもらって、そのまま朝まで寝てしまうことが週に何回もあった時期がありました」
◆さんまは超短眠 遺伝要素が強い
こうした逸話について、西野教授はこう分析する。
「ダラダラと長くではなく、質の高い深い睡眠ができているのは間違いないでしょう。長く質の良い睡眠がとれている可能性があります」
さて、ここまで話を聞くと気になってくるのが、自分自身の睡眠時間だ。大谷のようなロングスリーパーになれば、仕事などでパフォーマンスを向上させることができるのだろうか。
一方で、ロングスリーパーとは逆に、かつて「1日3時間しか寝ない」と言われたお笑いタレント・明石家さんまのように、ショートスリーパーとして知られる人物も少なくない。ビジネスの世界では短眠が有利だとする風潮もある。だが、現実にはロングスリーパーもショートスリーパーも、「なろう」と思ってなれるものではないようだ。前出の西野教授が語る。
「4時間未満の睡眠でも健康を維持するショートスリーパーは、ロングスリーパーと同じく、1%未満の少数と考えられています。いずれも遺伝的な素因を有する方々です。ほとんどの人はそうした遺伝子を有しませんので、睡眠時間を無理やり短くしたり長くしたりすれば体を壊します。くれぐれも、大谷選手のマネをしないようご注意を。重要なのは、身体が必要とする睡眠時間に比べて、どれだけ寝ているか。適正な睡眠時間を確保し、かつ深い睡眠がとれれば、身体のメンテナンスに有利に働く可能性があります」