田原総一朗・ジャーナリスト
田原総一朗・ジャーナリスト
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 ジャーナリストの田原総一朗氏は、ウクライナ侵攻の今後を予測する。

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 ロシアが、2月24日にウクライナに武力侵攻してから8カ月がたち、ウクライナ軍が東部でも南部でも力強く反撃している。

 業を煮やしたのか、プーチン大統領は10月20日、一方的に併合を宣言したウクライナ4州に「戒厳令」を出した。「戒厳令」を出すということは、事実上の戦争状態になるということだ。

 これまでプーチン氏は、ウクライナへの武力侵攻について、「特別軍事作戦」と称していた。ウクライナのナチス勢力を抑えるための作戦で、「戦争ではない」というのである。これは、あくまでNATO、そして米国に対抗するためのものではない、との表向きの表現であろう。それを、一方的に4州に対しては「戦争」宣言を行った。

 西側の情報筋は、プーチン氏は追い詰められて焦っているのだ、と捉えている。「戒厳令」を出すことで戦況はどう変わるのか。

 たとえば、町を壊して基地化する、あるいは住民を強制移動させたり、徴兵したりすることができる。さらに、電話やメールなどの検閲もできるようになる。

「戒厳令」の導入で、ウクライナ側はどうなるのか。西側の情報筋は、ウクライナ軍はいささかもひるまず、逆にますます戦意を高め、激しく反撃する、と見ているようだが、私も同様に捉えている。

 さらにロシア側はここへきて、ウクライナ側が放射性物質をまき散らす爆弾、いわゆる「汚い爆弾」を使用する恐れがある、と一方的に主張している。

 25日に非公開のかたちで行われた国連の安全保障理事会の緊急会合で、欧米各国は「汚い爆弾」をめぐるロシアの主張は、虚偽の情報だと非難した。ウクライナの仕業と見せかけて、ロシアが自ら「汚い爆弾」を使う可能性があると見ているようだ。私自身、同じ捉え方をしている。

 ともかく、ロシアに対して戦意らしいものは見せていなかったウクライナに対して、ロシアはいきなり大規模の武力侵攻を行った。

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