プーチン氏としては、ウクライナに本格的な武力侵攻を行えば、ウクライナ軍は数日でお手上げとなり、簡単に親ロシア政権が樹立できると読んでいたのであろう。その目算が外れたわけだ。
10月20日、ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシア軍がドニエプル川のカホフカ水力発電所のダムに「爆弾を仕掛けた」との情報があると指摘した。
一方、ロシア軍のスロビキン総司令官は、ウクライナ軍がダムなどインフラ施設に攻撃を仕掛けようとしていると主張している。
ダムをめぐって両国はまったく逆の主張をしているが、ウクライナ軍がそんなことを仕掛けてもメリットはなく、もしもロシアがダムを破壊すれば、80以上の集落が水没し、数十万人の市民が被害を受ける可能性があるという。
世界中の人間が、ウクライナ戦争の一日でも早い停戦を願っているのだが、残念ながら停戦に向かいそうな気配はない。停戦を誘導できるのは米国のバイデン大統領だが、目下、国内問題に大苦戦中で、この原稿執筆時点では中間選挙でも苦戦が予想されており、そんな余力はなさそうだ。
このままでは年明け、春先まで泥沼のような戦争は続くだろう。世界中がただ傍観しているだけの状況に歯がゆいばかりである。
田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数
※週刊朝日 2022年11月18日号