ところで森さんだが、一貫して小室夫妻の結婚を擁護してきた。そのためツイッター上でさまざまな中傷を受け、大学には頻繁に「森をクビにしろ」といった匿名電話が来た。現在、それらに法的措置をとる準備をしている。「被害者が動かないと社会は変わらないと思うから」と森さん。
「国民」相手に反論するのはよくないという考えが戦後皇室の基本になっているが、戦前には「皇室裁判令」があり国民を訴えることもできた。若い皇族方のためにも、「反論しない」戦略は脱却する時、と森さん。そこで期待するのが圭さん。メディアに追われる苦境を発信し、場合によっては反論してもいい。それが森さんの考えだ。
最後にもう一冊、本を紹介する。白石優生さんの『タガヤセ!日本』だ。白石さんは農林水産省広報室の職員だが、登録者数16万人を誇る同省の公式チャンネル「BUZZ MAFF」の管理人であり出演者。「日本初の国家公務員ユーチューバー」として有名だ。
BUZZ MAFFがバズった理由を一言でいうなら、「白石さんの率直さ」だと思う。コロナ禍で売れなくなった花を買ってほしいと訴え、牡蠣(かき)の養殖や水産試験場が描かれる朝ドラ「おかえりモネ」を熱く語る。農業愛があふれている。だから、この本はユーチューブ本ではなく、白石さんが農業の魅力を14歳に語るという本だ。
率直さと愛が理解の源泉。宮内庁にはぜひ、「BUZZ MAFF」を研究してほしい。(コラムニスト・矢部万紀子)
※AERA 2022年11月14日号