■陰謀論がはびこる
ジャーナリストとして、根拠のない報道を重ねる最近の週刊誌やワイドショーには憤りを感じているし、それらを放置し、ファクトチェックをしない大手メディアも大いに疑問だ。これでは佳子さまはおちおち外出もできないし、「歯医者に行く自由」もないではないか。そう訴える森さんに、宮内庁の報道に対する姿勢について聞くと、「情報をめぐる21世紀的状況を、宮内庁はピンときていないと思う」と返ってきた。
21世紀的とはつまり陰謀論がはびこる世界。陰謀論を信じる人たちの発想は、既存の大手メディアの報道はすべて嘘で、週刊誌報道はすべて正しい。週刊誌が大手メディアの「嘘」の根拠でもあり、信じたい人が信じたいものを信じる。それなのに宮内庁は宮内記者会に属する従来メディアの「公式報道」だけでよいと思ったまま、という。
ただし、宮内庁を一方的に断じる気持ちはない、と森さん。令和の報道への方針に沿っているのが宮内庁だから、と。
先述した「皇室関連報道について」を見ると、令和になってアップされたのは2件。うち1件は「上皇ご夫妻と眞子さまと圭さん」問題だ。陛下と雅子さまは、報道には反論しないという考えなのだろう、と森さん。
反論の難しさを語ったのが、秋篠宮さま。昨年11月、誕生日にあたっての会見でこう語った。
「記事の中には創作もあれば正確なことも、両方混ざっているわけですね。一つを採り上げてそれは違うと言うことはできますけれども、そうしたらここも違うし、これは正確だしというのを全部説明していかないと本当はいけないのではないかなと思うのですね」
一方で、宮内庁も23年度からSNSを始める方針だと伝えられている。8月末、23年度予算の概算要求に、SNS要員として参事官1人を新設、職員2人を増やすことを盛り込んだと公表したのだ。
■農水省を研究して
「21世紀的状況」を視野に、秋篠宮家や小室夫妻の報道も変わるのではと期待が膨らむ。が、森さんの見立ては少し違った。
「SNSは定員増を図りたい宮内庁が財務省を説得するために持ち出したもので、すぐに始めるような状況ではないと思う」
宮内記者会への説明もトーンダウンされているという。