官庁や企業の本社が集中し、災害や感染症など大都市が抱えるリスクが顕在化している。いまこそ一極集中の是非を問うタイミングだ(撮影/写真部・馬場岳人)
官庁や企業の本社が集中し、災害や感染症など大都市が抱えるリスクが顕在化している。いまこそ一極集中の是非を問うタイミングだ(撮影/写真部・馬場岳人)
この記事の写真をすべて見る

 人口と首都機能が集中する東京には、様々なリスクがある。ドラマ「日本沈没」が話題だが、実際に沈む、沈まないにかかわらず、脅威について考えておくことも必要だ。AERA 2021年11月29日号の特集「日本沈没を検証する」から、ここでは「地震」のリスクを追う。

【写真特集】一極集中が進み、どんどん「巨大化」する東京は、どうなる…

*  *  *

 東京の脆さが改めて浮き彫りになったのが、10月7日夜に首都圏を襲った地震だった。千葉県北西部を震源に地震の規模を示すマグニチュード(M)は5.9、東京で最大震度5強を記録した。首都圏のJRや地下鉄など各線で一時運行がストップし、駅は帰宅難民であふれた。水道管からは漏水し、インフラの脆弱さも見せつけられた。

 さらなる巨大地震が東京を直撃するとどうなるのか。

 最も心配されているのが30年以内に70%の確率で起きるとされる首都直下地震だ。都心南部の直下で起きた時で、M7級。Mが1増えると、放出されるエネルギーは約30倍になる。都心部でも最大震度7の揺れが予想され、全壊・焼失する建物は61万棟近くに上り、死者は2万3千人。経済的被害は約95兆円と、国家予算に匹敵するとされている。

撮影/写真部・馬場岳人
撮影/写真部・馬場岳人

 被害は甚大だが、災害リスクマネジメントを専門とする立命館大学環太平洋文明研究センターの高橋学特任教授は、首都圏全体へのリスクを考えるべきだと語る。

「国が想定する首都直下地震は、活断層がずれることによって起きる活断層型地震で、震源の深さが10キロ程度と浅いため、被害は大きくなりますが比較的狭い範囲にとどまります。注意が必要なのは、震源の深さが100キロ近くになり被害が広範囲に及ぶ境界型地震です」

5秒周期の長い揺れも

 境界型地震とは北米プレート、太平洋プレート、フィリピン海プレート、ユーラシアプレートと日本周辺でひしめきあっている4枚のプレート(岩板)の境界の断層運動による地震のことだ。2011年3月の東日本大震災も境界型地震で、しばしばM8クラスの巨大地震となる。

次のページ
「相模トラフ」と「スーパー南海地震」