
■昔からこんな写真を撮っていた
今回展示する作品は「これまで温めていたテーマ」と言う。
「こういう写真を追いかけていきたいんですよ。その意思表示のような写真展。活動のスタート」
その土台となったのが2012年に出した写真集『泉の森』(風景写真出版)という。
「この作品では『水のめぐり』をたどっていった先に見えてくるものを丁寧に写真でとらえた。海水が温まって、雲ができ、山にぶつかり、雨が降る。そんな水のめぐりと、命のめぐりはいっしょだなあ、と思うんです。森や海がたくさんの生命を宿している。で、今回は水だけじゃなくて、命がぐるぐる、激しくうごめいている世界を見せたいと思った」
展示作品は、最近写したものもあれば、「だいぶ前に撮った古いものもある」と言う。
「昔からこういう写真を撮っていたんですか?」と、たずねると、「アシスタントだったころから」と、振り返る。

福田さんが風景写真家・竹内敏信さんのアシスタントを務めていたのは、1994年春からちょうど3年間。
「あのころは、時間もないし、お金もなかったから、そんなに遠くには行けなかった」
通ったのは実家のある埼玉県蕨市から8キロほど離れた秋ケ瀬公園(さいたま市)。
荒川沿いの大きな公園で、「小さな雑木林があるんですよ。そこで、地上高30センチくらいの、林床から見た風景をモノクロで撮影していた。狭い場所で、『ぜんぜん動かないね、あの人』とか、言われそうなペースで」。
林の中に腰を下ろすと、さまざまなものに出合った。
「クモやカマキリ、ナメクジだったり。植物の姿とか。そんなものに次から次へと気づくのが楽しい。でも、『美しい写真』ではなかったですね。なんか、もっと、ドロドロとしたものを追いかけていた。こういう小さなものを見つめるのって、好きなんですよ。だからいま、そこに戻ってきちゃったのかもしれないなあ、と思って。風景を撮りつつ、そこにずーっと深く、もぐってみると、生きものがいますよ、と」