撮影:福田健太郎
撮影:福田健太郎
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 写真家・福田健太郎さんの作品展「生々流転(せいせいるてん)」が12月1日から東京・目白の竹内敏信記念館・TAギャラリーで開催される。福田さんに聞いた。

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 インタビューの前、福田さんからメールで送られてきた展示写真のフォルダーを開くと、海辺の風景が目に飛び込んできた。しかし、なぜか、写真全体が赤く染まっている。

 シカやウサギ、ヘビなど、動物を写した写真のほか、ハチやチョウ、クモなど、昆虫の写真もたくさんある。

 さらに、よく分からない写真も――えたいの知れない緑の植物(?)。ごつごつとしたきのこのような形をした物体。極め付きは、霧に包まれたピラミッド。

撮影:福田健太郎
撮影:福田健太郎

■環境ががらっと変わっちゃた

 福田さんと会ったのはその1週間後。

 東京・新宿のオリンパスギャラリー前の喫茶店。福田さんはテーブルに着くと、ノートを開いた。箇条書きされた文章が見える。話したいことをまとめたという。

「このコロナの1、2年で自分の環境ががらっと変わっちゃった」と、福田さんが口を開く。

「自粛、自粛と言われて。同調圧力にはほんと、うんざりしちゃいましたけど、やっぱり、撮影には出かけにくいですよ」

 感染が拡大している東京の人には来てほしくないという、現地の人の心配もよく分かると言う。

「だから、ひっそりと、なるべくどこにも寄らないようにして出かけた。自分の訪ねたいエリアは人が住んでいないので、そこへ入ってしまえば、コロナ前と変わらず、自然はゆったりと流れていたわけですけれど」

 そう言って、コーヒーをすする。

「あと、ぱったりと仕事がなくなっちゃったとか(笑)。どうなっていくのかな、という不安がありましたね」

 写真活動をしていても、誰も見向きしてくれないのではないか。そんな、あせりや怖さ。

 しかし、そう感じるいまだからこそ、写真で訴えたいものあるという。

「(25年ほど前に)アシスタントだったときのことを思い返してみると、社会に対して訴えたいものがあった。生意気にもそこに届けたいものがあると思って写真をやり始めた。問題意識を持つというか、もっと心に刺さる写真を出していかなくちゃ、ということですね。それを自分自身に問いたいし、みなさんにも問いかけたい」

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昔からこんな写真を撮っていた