また、70代には新しいことにチャレンジしようと、五木さんは言います。ご本人は「百寺巡礼」の企画に挑戦しました。百もの寺を巡る体力があるだろうかと不安だったのですが、だめだったら仕方がないと開き直って第一歩を踏み出したそうです。そうしたら、お寺を巡るたびに、心身が充実して、気力体力が整ってきたというのです。
五木さんのすごいところは、あくまで70代をプラスにとらえているところです。それができるか、できないかが、その後の人生の分かれ目だと思います。
私自身は、がん患者さんよりも一歩でも二歩でも死に近いところに自分を置こうと「今日が最後の日と思って生きたい」と考えていたのですが、60代のときは無理でした。70歳を過ぎて、やっとその心境になったのです。長年続けている太極拳も70代になってから、本当に価値がわかるようになってきました。
70代だからこそできることがあります。それを大切にしましょう。
帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中
※週刊朝日 2021年12月10日号