帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長
帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長

 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは「70歳が分かれ道」。

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【プラス】ポイント
(1)よりよく老いるためには70代が重要になってくる
(2)70代をプラスにとらえられるかどうかが分かれ目
(3)70代だからこそできることを見つけ大切にしよう

『70歳が老化の分かれ道』(和田秀樹著、詩想社新書)という本を読みました。けっこう売れているらしいです。確かに、タイトルが気になりますね。

 この本の「まえがき」にこうあります。

「人生100年時代ということが語られて久しくなりましたが、(中略)健康寿命の延びは、平均寿命の延びに追いついておらず、男女とも75歳に届いていません。要するに、70代をうまく生きないと、長生きはできてもよぼよぼとしたり、介護を受ける期間の長い高齢者になってしまうということです」

 私は老化に抵抗するアンチ・エイジングには反対ですが、よりよく老いるのに、70代が重要だという考えには、賛成します。70代をどうとらえるかによって、その後の人生が変わってくると思うのです。

 作家の五木寛之さんは、『百歳人生を生きるヒント』(日経プレミアシリーズ)という本のなかで、「百歳人生の後半五十年において、七十代は、まさに『人生の黄金期』といえるのではないでしょうか。あるいは、再来の青春といっていいのかもしれません」と語っています。実はご本人も、50代、60代には心身に不調があったが、70代になって少しずつ治まってきて、元気になったというのです。

 そういう70代だからこそ、「七十の手習い」をしたらいいと、五木さんは勧めています。ご本人は若い頃には勉強が嫌いだったのに、50代で大学の聴講生になってみたら、学ぶことのおもしろさに目覚めたというのです。それは歳をとることの効用のひとつで、70歳になって大学に顔を出すというのは悪くない。世のため、人のためでなく、純粋に自分の楽しみのために学ぼうというのです。

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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