一人ひとりが家族と話し合うことが大切だと説くのは、早期緩和ケア大津秀一クリニック院長で、『死ぬときに後悔すること25』などの著書がある大津秀一氏だ。

 大津氏は、脳梗塞(こうそく)で倒れた70代の男性が、半身まひと失語の後遺症が残り、認知機能も低下、本人の意思を正しく確認することが難しい状況になったことを例に挙げる。

「お子さんには何度か『俺は、人らしい生活ができなくなったら、何もしなくていい』と言ったことがありました。彼は嚥下(えんげ)機能障害が深刻で、胃ろうなどの栄養法を行うことが医学的には良いと考えられましたが、そこで息子と娘とで意見が割れました」

 息子は「人らしい生活ができなくなったら」という言葉から、望んでいないのではないか、と。一方、娘は、さすがに何ら栄養を摂取しなくて良い、積極的に死にたいとまでの意思ではないのではないか、との考えだったという。

「人の終末期にどこまで治療を行うのが良いかは難しい問題です。自分にとっての尊厳死というものについて、家族や周囲の人とよく話し合い、自分の望む最後の姿について明らかにし共有しておくことが大切です」

 終活がブームとなっているが、まずは死そのものについても考えてみる必要がある。(本誌・鮎川哲也、菊地武顕、秦正理)

週刊朝日  2021年12月10日号

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秦正理

秦正理

ニュース週刊誌「AERA」記者。増刊「甲子園」の編集を週刊朝日時代から長年担当中。高校野球、バスケットボール、五輪など、スポーツを中心に増刊の編集にも携わっています。

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