「どこの国で、どの親で、どうやって生まれるかは選べません。でも死に方は選べるでしょう、という考えです。どこで何を食べ、どこに住むかを選ぶように」

 もちろん尊厳死に対しては反対意見も多くある。

 では、世界各国ではどのような状況なのか。イギリス、オーストリア、クロアチア、スペイン、ハンガリー、フィンランド、ポルトガル、ドイツ、フランスなど欧州では、比較的早い段階で合法化されていた。

 近年ではイタリアが17年12月に法律を制定し、翌18年1月に施行した。法制定の背景には、交通事故の後遺症に苦しむ男性ディスクジョッキーがスイスで安楽死を選んだことなどで、世論が動いたからといわれる。

 韓国では16年に「延命治療決定法」が成立し、患者の意思で延命治療を中断できることになった。同法が18年2月に施行されるや、4カ月間で8500人が延命治療を取りやめたと報じられた。

 日本でも議員立法による法案提出に向けた動きがある。超党派の「終末期における本人意思の尊重を考える議員連盟」の増子輝彦参院議員が語る。

「あくまで本人が尊厳ある死を選択できるように、と。本人の意思が第一です。リビング・ウイルを提出し、主治医とそれに準ずる医師、2人以上の同意が必要だと、法案作成に関して内閣法制局と何度も議論しました。死生観は個人の問題だから、法律を当てはめるのはけしからんという意見もありますが、静かに尊厳ある死を迎えようとする人の意見も尊重すべきであると私は考えます」

 もちろん、こうした法制化に対しても、ALSの患者などは、「難病患者や障害者の生命を脅かす」などとして反対している。緩和ケアなどの充実が先とする意見や、延命措置を中止するかどうかを法律で規定すべきではない、という医師や学者も多い。

 法が整っていても解決する問題でもない。

 消極的安楽死が認められているフランスで19年7月、交通事故で全身まひになり10年以上になる男性が、延命措置の停止により死去した。男性の妻は13年以降、延命の停止を訴え続けてきたが、男性の母は「息子は終末期でもないし植物状態でもない」と主張。そのため尊厳死の肯定派と否定派が激しく争う事態となったのだ。

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