■7割が合併するアレルギー性鼻炎
吸入ステロイド薬による治療が効かない人の中には、ほかの病気を合併しているケースがある。アレルギー性鼻炎は、ぜんそく患者の7割程度が合併していることがわかってきた。医大前南4条内科院長の田中裕士医師はこう話す。
「花粉症など鼻からのどにかけての慢性のアレルギーが、ぜんそくを悪化させます。ぜんそくの治療で多少よくなっても完全には治らないタイプの人は、アレルギー性鼻炎を合併していることがよくあります」
合併しやすい病気としてほかには、胃食道逆流症がある。胃酸が食道に逆流する病気で、胸やけや呑酸(酸っぱい液体が上がってくる感じ)のほか、のどの違和感や慢性的な咳が続く人もいる。横隔膜の動きが活発になると胃酸が逆流するので、食後や会話をするときなどに咳の症状が出やすい。比較的高齢のぜんそく患者に合併しているケースが多い。
ほかに考えられる病気として、副鼻腔気管支症候群がある。慢性副鼻腔炎に慢性気管支炎、気管支拡張症などを併発した病気で、鼻づまりや鼻汁に加え、咳や痰の症状が出る。難病指定の好酸球性副鼻腔炎では、特にぜんそくを合併しやすい。合併症の治療をしなければ、ぜんそく症状はよくならない。
ぜんそくは薬物治療だけではなく、ダニやほこり、カビなど、アレルゲンを避けるための環境調整も重要だ。
「環境を調整できれば、完全に薬をやめられるかもしれませんが、実際には家や職場の環境を大きく変えるのは難しいですよね。同じ環境にいる限りは付き合っていく病気であり、吸入ステロイド薬でコントロールしながら、重症化させないということが大切です」(田中医師)
(文・中寺暁子)
※週刊朝日 2021年12月17日号