西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは「自由に老いる」。
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【可能性】ポイント
(1)河合隼雄・多田富雄対談で語られたのは老いの多様性
(2)老いても常に創造的であり続けるのが「老後の初心」
(3)老いても自分なりの可能性を見つけ自己実現しよう
臨床心理学者、河合隼雄さんの著書『「老いる」とはどういうことか』(講談社+α文庫)の巻末に免疫学者、多田富雄さんとの対談が収録されているのを見つけました。老いについて意見が交わされています。お二人とも私が大好きな方なので、さっそく読んでみました。
両者ともすばらしい頭脳の持ち主なので、阿吽(あうん)の呼吸でわかりあってしまうのですが、そのやりとりに感服しました。
お二人がおっしゃっていることの一つは、老いの多様性についてです。多田さんは免疫系の老化について、ある人ではある機能がまず低くなるが、ある人ではかえってその機能が高くなるというような多様性があると語ります。みんなが単一に老化していくのではないのだというのです。
それを受けて河合さんは、老化に個性があるとしたら、老人にあたっていく人というのは、単純なマニュアルで対応していけないのではないかと問題提起します。老化の個別性を無視して、マニュアル通りに、あなたは老人だからこうしなさいと言われるのでは、たまったものではありません。行政的には65歳以上は高齢者扱いであるわけですが、画一的にそう宣言されると、それ以降は老化しなければいけないような気になります。河合さんは「老人のほうも、一般的パターンに汚染されずに、もうちょっと自分の個性というものを生かしながら、どう生きるかというふうに考えるべき」と提言します。