小林氏は今回の不祥事について、「理事長の逮捕でかえって膿が出されて評価する人もいるのでは」とし、悪質タックル騒動と比べて影響は「限定的」とみる。
一方、次の入試で「志願者数が大幅に減るだろう」と予測するのは、大学ジャーナリストの石渡嶺司氏だ。
「アメフト騒動の時は、タックル指示のあった試合が5月で、報道の収まった時期が8月前後でした。一般入試の頃にはほとぼりが冷めていたわけです。それに対し今回の背任事件と脱税容疑は、報道され始めたのが9月ごろから。そして、保留状態になっている政府からの助成金交付の最終決定が来年1月ですので、今後も注目を集めるでしょう。9月~1月という時期は、受験生にとっては一般入試の志望校を最終決定する時期にあたります。この時期にネガティブなニュースが断続的に流れ続けるのは、どう考えても悪影響。今回の事件は前回のアメフト騒動以上の影響を及ぼすだろうと思います」
時期に加え、「お金の問題」が絡んでいることも大きいという。
「理事長の自宅から札束がゴロゴロ出てきて、脱税のトンネル会社として学生の教育用品を扱う会社が使われたとなれば、あまりにもイメージが悪い。今回の事件では日大事業部が絡んでいて、学生が購入する物品にも影響があった可能性がある。そうなると、受験生及び保護者にとっては他人事ではなく、自分事になります。アメフト問題は一般入試の受験生にとってはあまり馴染みのない世界でしたが、今回の事件では遠い世界の話ではなく、すごく身近な話になる。影響は大きいと思いますよ」(石渡氏)
今回の不祥事は、入試の難易度にも影響するのだろうか。
日大は、東洋大・駒澤大・専修大とともに「日東駒専」と呼ばれ、首都圏の中堅私大グループの一つとみなされている。石渡氏によれば、2000年代までは「日東駒専」の中でも日大の難易度がトップで、2番目以降をほかの3大学が争う構図だったが、10年代以降、東洋大が躍進しているという。河合塾の17年度と21年度の偏差値データを比べると、東洋大は8割以上の学部・学科で伸長。看板学部の一つである文学部哲学科は、2017年度の50・0から21年度は57・5まで伸ばしている。一方の日大は、一部学部で上昇がみられるものの、横ばいか下降傾向の学部が目立つ。東洋大は日大のタックル騒動の翌年に志願者数を約6500人伸ばし(前年比106%)、偏差値も上昇傾向にある。