屋上の遊園地は家族連れで賑わっていた
屋上の遊園地は家族連れで賑わっていた

 一方で、百貨店が従来得意としてきたのが富裕層ビジネス。外商と呼ばれる富裕層専門の担当者が訪問販売し、来店の際には付き添う。

「三越や伊勢丹などの百貨店で売り上げ全体の15%程度が外商からとみられる」と話すのは、金融コンサルタントの高橋克英マリブジャパン代表。著書の『地銀消滅』(平凡社新書)では地方銀行と同じように、百貨店の閉店や再編が相次いでいると指摘するが、百貨店にしかない外商の強みは「ワンストップ」という。

「なじみの外商に頼めば、高級外車の購入先や旅行の手配先などにつないでくれる。富裕層には利便性がいい」(高橋さん)

 ただ、富裕層も世代替わりして、ネット通販に慣れた若い世代になると「ブランド価値がどこまで通用するのか」(同)。外商の将来は安泰でないという。

 そんな百貨店の外商ビジネスについて、オンライン接客で顧客層を広げられるとみているのが青山さん。

「外商が訪問販売できるのは1日に3件くらいが限度。オンラインになると、北海道や沖縄の顧客にも対応できる」(青山さん)

 従来の外商は例えば年間購入額1千万円クラスしか対応できなかったが、100万円クラスの顧客にも、それほどコストをかけずに対応できるとみる。「カジュアル外商」のようなもので、顧客層を拡大できるという。

 外商の商品の目利きや、ワンストップの接客サービス、さらに外商と付き合いがあるという社会的なステータスに価値を感じる富裕層はいそうだ。

 一方、業態転換しつつある百貨店は、シニア層にありがたい存在になるかもしれない。シニアは年々、身体機能が衰え、行動範囲が狭くなる。好立地の百貨店に診療所や図書館など、さまざまなサービスが集約されると便利。あまり歩かずにすみ、図書館などの施設は百貨店にとっても顧客層の拡大につながると、青山さんはみている。

 さらに、これからの百貨店は単体でなく、周辺を含め、地域や街全体の発展を考えないと、存続は厳しいかもしれない。人口が減少して消費も低迷し、全体のパイが縮小するなかを「勝ち抜いていかないといけない」(同)からだ。

 東京の日本橋にある三越と高島屋が競うのでなく、手を携えて街づくりをしていかないと、共倒れになると青山さんは話している。(本誌・浅井秀樹)

週刊朝日  2021年12月24日号

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