ところがこのホテルときたら、膝(ひざ)丈までしかない薄いガウンのような寝間着にペラッペラの布団。そこでエアコンの風にさらされて寝ろと? いやいやこれって何なの? 膨大なエネルギーを使って部屋を「暖かく」して、その中で薄着で過ごすのが贅沢(ぜいたく)ってことなのか? 言うてなんだが、世の中今だってコロナコロナでホテルでもマスク着用は義務で、しかし部屋ではわざわざ風邪をひかせるようなシステムを作っているという矛盾!
電気もガスも最小限で暮らしてみてわかったことは、エネルギーを使いまくる生活は案外便利でも豊かでもないってことだ……と同行の友人に鼻の穴をフンフン膨らませて演説していたら、加湿器借りればいいじゃんと言われる。なぬっ? スイッチひとつで問題を生み出し、それを解決するために別のスイッチを押すってこと? その結果また結露だカビだと問題が起きるんだよ、ジョーダンじゃねえと意地を張り、マフラーをして寝てなんとか生きて帰ってきた。
稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行
※AERA 2021年12月20日号