もしかしたらミュージシャンや役者さんも「30歳まで」な感じだったかもしれない。僕はカンニングというコンビが現役で、バリバリの若手でやっているときでも「30歳まで売れなかったらもう終わりだぜ」っていうような、風潮の中でやったわけですよね。
M-1 に話を戻すと、元々、M-1は紳助師匠が「10年やって芽が出なかったら、もう駄目ってこと教えなあかん」というところから、10年のキャリアで出場枠を一区切りしていたところから始まった。10年でキャリアで切っていたのも、芸人が多すぎるから将来のことを考えると、それもある意味優しさだとは思います。でも、僕も当事者だから、売れなくて10年越えても、まだまだ芸人をやりたいと思ってはいた。でも、世の中は「30歳まで」「10年のキャリアで芽が出ないと……」と、そんな風潮だったんですよね。
その「30歳」に変化があったのが、僕と同じ事務所のスギちゃんのブレーク。「ワイルドだぜ~」で売れたのが、30代後半ぐらいですよ。その時、同じ世代の芸人たちはまだまだ可能性はあるって頑張って、どんどん年齢の引き上げが進んできた感じがあった。
今回、M-1 優勝の錦鯉の(長谷川)雅紀さんが50歳だから、まだ頑張れるという40代の若手もいるかもしれない。芸人の世界には「40代若手」って言うのはたくさんいるんですよ。40代になってくるとネタを披露するライブハウスに出られなくなってくるから、40代でこれからどうするかとか、他のことをやりだしたりだとか、得意分野で仕事を探そうしたりするんです。でも、錦鯉のM-1優勝で50代まで若手が引き上げられた可能性があるかもしれない(笑)。
なかなか(長谷川)雅紀さんみたいなことってできないですよ。キングオブコントでバイきんぐが優勝した時もそうで、小峠も30過ぎで売れたんだけど、彼らも売れない芸人の希望の星だったと思う。小峠の話を聞いたら、めちゃくちゃ努力をしていた。「そんなことまでやってたの!」って驚いたほどで、有名な大会で優勝するとはそういうこと。たぶん錦鯉も、同じように努力を重ねてきたと思うんですよね。準決勝や決勝まで行くようなコンビは相当努力している。