不安を抱えるのは、進路指導を行う教師も同じだ。都内の公立中学校で3年生の担任を務める女性教諭は言う。

「例年子どもたちは、年内に志望校を決定し、学校も年内に調査書を完成させます。スピーキングテストの結果が振るわなかった場合、志望校を変更する生徒も出る。でも出願までは数週間しかありません。現場を少しでもわかっているのなら、こんなスケジュールはありえません」

 突出して多い反対理由は、「公平でない」ことだ。複数の教育関係者は、このテストに似たテストを複数回実施している地域や学校がある一方、全くしていないところもあると指摘する。

「不受験者」の扱いも大きな課題だ。テストを受けない(受けられない)生徒は、他の受験生の点数から類推した点数を割り当てられる。文京区在住の中学2年生の保護者はこう話す。

「他人の評価の平均が、自分の評価になる受験なんて聞いたことがない」

 認知科学者で、小・中学生のつまずきの原因を見取るためのテスト開発も行う慶應義塾大学環境情報学部の今井むつみ教授は言う。

「公平性が絶対に必要な入試として成立していない。コストは高く、犠牲は大きく、教育的な効果は期待できない」

 実施まで1カ月余りだが受験生や保護者の怒りは収まらない。

「受験に本当に必要なことなのか? 子どもたちを食い物にしないで」(西東京市在住の中3の保護者)

「あいまいで不透明で信頼できる要素が皆無。猛烈な怒りを感じる」(都内在住の中3の生徒)

 大きな反発を招いた原因の一端は、都教委の対応にもある。電話に出ない、出された資料は黒塗りばかり……。今回も都教育庁都立学校教育部高等学校教育課に疑問点を問い合わせたが、期日までに返答はなかった。(ライター・黒坂真由子)

AERA 2022年10月24日号

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