『歌集 じゃんけんできめる』(1870円〈税込み〉/小学館)
日曜日の朝日新聞に掲載される「朝日歌壇」コーナーで毎週のように選歌される山添一家。短歌ファンの密かな話題となっていた家族3人の歌をまとめた歌集が本書である。日常のありふれた、しかし振り返ってみれば貴重な出来事や季節のうつろいが三人三様の言葉で紡がれていく。短歌を通じて子どもたちの成長過程が見られるのも楽しい(photo MIKIKO)
『歌集 じゃんけんできめる』(1870円〈税込み〉/小学館) 日曜日の朝日新聞に掲載される「朝日歌壇」コーナーで毎週のように選歌される山添一家。短歌ファンの密かな話題となっていた家族3人の歌をまとめた歌集が本書である。日常のありふれた、しかし振り返ってみれば貴重な出来事や季節のうつろいが三人三様の言葉で紡がれていく。短歌を通じて子どもたちの成長過程が見られるのも楽しい(photo MIKIKO)

 日々短歌に取り組む聖子さんの影響で、まず葵さんが短歌を詠み始めた。「朝日歌壇」に投稿をすると四首目で選ばれ、紙面に掲載された。

「私は短歌のたねを集めたノートを作っています。楽しかったことや嬉しかったことのたねをまとめ、必ず使いたい言葉などを書いておきます。それを忘れないうちに歌を作るんです」(葵さん)

 画面にそのノートを掲げて見せてくれた。

 ランドセルはじめてせおうとうれしくてきんいろのきもちになりました

 葵さんは早い時には3分で一首詠んでしまうそう。楽しそうなお姉ちゃんの姿を見ていた聡介君も、やがて自然に歌を詠み始めた。最初は「やまぞえそうすけ」というひらがな名での投稿だった。

「最近では歌にどんどん漢字が入ってきて、『ひらがなのそうすけ』はもう戻らないんだなって思います」(聖子さん)

 慣れない取材に照れたのか時々画面から消えてしまった聡介君だが、歌はいつも生き生きとしている。

 算数の九九で一番すきなのは九のだんですかっこいいから

 最近はお父さんも歌を詠むことがあるとか。葵さんが父を詠んだ歌は、弟が父に短歌を教えてた「ならったかん字はぜんぶつかいや」

 本作りに打ち込んだ今年の夏休みは、一家にたくさんの思い出をもたらした。(ライター・千葉望)

AERA 2022年10月24日号

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