「1990年代初頭のバブル崩壊時に市況が急落したのは、不動産融資の総量規制など当局が急激に金融を引き締めたからです。それが『失われた10年、20年』を招いたのですから、同じ愚を犯すことはまずないと思われます」

 つまりは下がる場合もゆっくりと、かつ、なだらかに下がっていく。

「下がり始めてから売却を考えても十分間に合うわけです」(同)

 沖氏の“シナリオ”に従うと、今の「儲け」を活かす道を考える時間は十分ありそうだ。

 もっとも、まだマンションを持っていない人、一次取得者層は迷っている暇はない。沖氏が断言する。

「値上がりがほぼ確定しているのですから、買わないという選択肢はありません。待てば待つほど、得られる見込みの『含み益』が減ってしまうから、遅らせるという選択肢もありません。価格が高いことはよくわかりますが、背伸びしてでも買うしかありません。具体的には、家賃並みのローン返済額で済むところで都心の資産性のある物件を買えば損はしないでしょう」(同)

 さて、自宅マンションの「儲け」を活かす道である。

 間違いなくフォローの風が吹いているのは「地方移住」を考えている場合だろう。先の住宅専門FPの有田さんが言う。

「地方と言っても完全な田舎じゃなくて人口10万~15万人の地方都市なら、立地のよい中心部のマンションが新築なら3千万円、中古だと2千万円ぐらいで買えたりします。会社員で転勤を繰り返した人の中には、気に入った街がある人がいらっしゃいます。私のお客さまでは、東北地方に住みたがっている方が多いですよ」

 2千万~3千万円なら今のマンションを売却すれば「おつり」が来るケースが多いだろう。それはそのまま「老後資金」に回せる。何と自宅で「運用」ができてしまったことになる。

 また、貯蓄が多い人なら今のマンションを賃貸に回す手もある。値上がり資産を原資に、毎年の不労所得を狙うのだ。

 先の日下部さんによると、地方都市のいい物件に移住するシニアが増えているそうだ。

次のページ