「旅行が趣味の60代や70代のご夫婦が、新幹線が停車する駅前のマンションに移住なさるケースがあったりします。小田原や札幌の駅前にこれからできるタワーマンションはずいぶん話題を呼びました」
では、首都圏など都市部での「買い替え」はどうか。
まずカギとなるのは今のマンションの住宅ローンの「残債」だ。繰り上げ返済をするなどで残債が少なくなっているほど「値上がり益」がそのまま使えて有利になる。
残債がさほどなく、40、50代の働き盛りで新たに住宅ローンを組める余裕のある人ならワンランク上を目指せる。今のマンションを高値で売却し、それにローンを上乗せしてレベルアップしたマンションを購入するのだ。
難しいのは、会社員としての残り時間が少なかったり、すでにリタイアしてしまったりした人たちだ。残債が少なく、仮に住宅ローンを完済している場合でも、今のマンションの売値の範囲内で次を探さなければならない。マンション全体が値上がりしている今の状況では、現在と「同等のもの」を取得するのは極めて難しくなる。
この場合の住み替えには、二つの考え方があるようだ。
一つは、「相対取引」である中古マンションの売買特性を利用する方法である。
「いろいろな事情で売買価格にはプラスマイナス10%ほどのブレ幅が生じます。そのブレをうまく利用するのです。こまめに情報をチェックして、今のマンションを相場より高く売り、次のマンションを安く買う──目ざとく実行すれば、有利な価格で取引できる場合があります」(沖氏)
確かに、中古マンションの価格交渉は柔軟だ。例えば、売り手が早くキャッシュが欲しい場合では、「現金払い」を約束すれば簡単に数百万円の値引きが成立したりすることがある。「売り」と「買い」で知恵を巡らせろということだ。
もう一つは、「条件」を下げることだ。先の日下部さんが言う。
「同等のものは無理なので、立地や広さ、高さなどの条件のどれかを外すのです。新築だと階数で価格が違うので10階以上の希望を2階に下げるとか、70平方メートルは欲しいと思っていた広さを60平方メートルに下げるなど、妥協していくのです」