「昨季は五輪に出られたのに、ちょっとのミスでも焦って、自分で悪い方向に追い込んでしまう感じでした。今は落ちついてスケートを楽しめています。ライバルの(松生・まついけ)理乃ちゃん(17)=スケートアメリカ、フランス杯=と、学校(愛知・中京大中京高)でもリンクでも一緒なので、とてもいい環境です」
松生は同じ学年の河辺が五輪出場を果たしたことで、やはり刺激を受けた。
「愛菜ちゃんが毎日一緒にいてくれることが、すごく力になっています。たわいもない『練習疲れたねえ』という会話でも、すごく心の支えになるし、頑張ろうって思えています」
中部ブロックでは、紀平や河辺らを抑えて優勝。昨季悩まされた捻挫も完治させ、シーズン前半から飛ばしていく。国際大会で200点を出すことが目標だ。
■ロシア勢は出場せず
昨季の全日本選手権4位の三原舞依(23)=イギリス大会、フィンランド大会=は悲願の五輪出場を目指す4年をスタート。かれんな滑りと見ている人が幸せになる演技が魅力だ。オフは羽生の拠点だったトロントで、プログラムのブラッシュアップとジャンプ練習をした。
「4回転とトリプルアクセルを、補助具を使って感覚をつかめました。スケーティングレッスンでも、エッジを滑らせながら、上半身はリラックスするという滑りを学んだので、生かしていきたいです」
8月の国内大会では、河辺を抑えて優勝。好スタートを切っている。
強豪のロシア勢は、ウクライナ侵攻を理由に国際大会から締め出されている。日本勢は世界選手権2位でベルギーのルナ・ヘンドリックス(22)=フランス杯、フィンランド大会=、同5位で韓国の劉永(18)=スケートカナダ、イギリス大会=、けがから復帰する米国のブレイディ・テネル(24)=イギリス大会、フィンランド大会=らとGPファイナル進出を争うことになりそうだ。
アイスダンスは、村元哉中(29)、高橋大輔(36)組が3季目を迎える。リズムダンスのラテンは、スピード感あふれる滑りと、切れ味あるステップが詰め込まれた、宝石箱のようなプログラム。またフリーダンスの「オペラ座の怪人」は、高橋が06~07年シーズンに滑り、世界選手権2位となった出世曲。15年ぶりに今度はアイスダンスで滑ることで、より崇高な芸術作品が誕生することが期待される。(ライター・野口美恵)
※AERA 2022年10月10-17日合併号より抜粋