(3)三つ目は「いのちに寄り添う」ことです。いのちをとらえる時に、欠かすことができないのが死の存在です。患者さんのいのちの先には、必ず死がひかえています。ですから、医師がしっかりした死生観を持つことなしに、患者さんのいのちに向き合うことはできないのです。私は死の向こう側の世界が見えるようになるぐらいで、本当の意味で患者さんのいのちに寄り添うことができるのではと思っています。そのためには、医師が歳を重ねることで、より死に近いところに立っていた方がいいのです。
私はまだ86歳。これから90歳、100歳を超えることによって、より一層、医療を深めることができるのではと、楽しみなのです。
帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中
※週刊朝日 2022年10月14・21日合併号