■人との出会いが自分の力になる
撮影は佐渡で。滞在1カ月程度だった。尾野は「料理がなんでもおいしくて。もう一回プライベートで行こうと思っているくらい、とても良いところでした」と話す。
彼女にとって初めて共演した人が多い現場だったが、「年齢が上の方も多かったので、和気あいあいとはちょっと違いますが、ほど良い緊張感の中で演技をさせていただけました」と振り返る。
「安藤さんやダンカンさんも初共演。ダンカンさんはバラエティー番組に出ていらっしゃるイメージがあったのですが、春男役は本当にぴったりだなって思いました。何もしていない背中を見ているだけでもすごいなと感じましたし、彼が息をしているだけで、『ああ、春男だ』とうらやましく思えました。
私にとって、人との出会いが(役者として)すごくためになります。この映画で新しい出会いがあってうれしかったです。うまく言葉にできませんが、一つの作品を共にすると自分の力になることがたくさんある。この作品に出会えてよかったなって思います。
裕子さんと現場で何を話しているか、ですか?
演技の話はあまりしないです。私もしたくないので。撮影以外はもう普通におばちゃん同士の会話みたいに話していますよ(笑)。そう言うと、みなさん『想像がつかない』とおっしゃいますが。裕子さんには特別感があって私もうらやましいなと思います。どんな方かわからないって、やっぱり魅力的じゃないですか。私も目指したいところですね」
登美子、奈美、登美子に思いを寄せ続ける春男、春男の母・千代(白石加代子)……。待つ人ばかりが登場するこの映画。
「ご覧になるみなさんもきっとそれぞれ感情移入ができる『待つ人』がいると思います。どのキャラクターに当てはまるのか、どの目線で見るのか。見た方がどういう感想をくださるのか楽しみです」
(敬称略)
(ライター・坂口さゆり)
※週刊朝日 2022年10月14・21日合併号