賛否の声が渦巻く中、安倍晋三元首相の国葬が終わった。参列者は4千人超だったが、反対の訴えは各地で続いた。当日の「分断の現場」を取材した。AERA 2022年10月10-17日合併号の記事を紹介する。
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国会正門前には、数千人規模の人が集まり、最後まで反対の声をあげた。
「国葬反対」のプラカードを持っていた山本清子(きよこ)さんは、長野県松本市から20人近い仲間と一緒にバスで3時間以上かけて駆けつけた。どうしても、自分の目で見たかったのだという。
「大事な税金を勝手に使って、許せないです。お金は生活に困っている人たちに使ってほしい」
都内で幼児教育に携わっている郡司真子(まさこ)さん(54)は、国葬反対のデモにはじめて参加したという。
「国葬を閣議決定だけで押し切って決めましたが、民主主義がなくなってしまう恐ろしさがあります」
国葬の中止や反対を訴えるデモは全国の各所で行われた。国葬会場に近い九段下交差点では、国葬反対を訴えるグループと日の丸を掲げた賛成派が鉢合わせ、怒号が飛び交い、一帯は一時騒然とした。
賛成と反対──。互いの意見がぶつかっている時、国葬やデモの現場を離れるといつもと変わらない日常があった。
国葬開催の午後2時。東京・渋谷のスクランブル交差点では、黙祷も行われず抗議の声もあがらず、大勢の若者が行き交っていた。
ロリータファッションに身を包んだ女子大学生(20)は、国葬が行われていることは知っているという。