少年時代の憧れだったザ・タイガース、瞳みのる(左)、森本タロー(右)と対面し満悦の花岡
少年時代の憧れだったザ・タイガース、瞳みのる(左)、森本タロー(右)と対面し満悦の花岡

地震では大ケガしたし、お気に入りのギターがいくつも壊れて大変だったけど、いつの間にかあの土地が好きになってました。空気が綺麗で自然豊かだし、人間の距離感もちょうどいい。疲れていた心が癒されたからかな。本でのんびり暮らしていると、また少しずつ新しいメロディーやフレーズが浮かんできたんです」

 ステージへの意欲も徐々に戻り、昨年は熊本で憂歌団の旧友・木村充揮とのジョイントライブが実現。多くのファンを喜ばせた。今後も積極的に活動していきたいという思いがあるそうだ。

「気の合う人間と、納得のいく音楽ができるならいくらでもやりたいんです。ただ俺は元々、ブルースばかりじゃなく、ビートルズやグループサウンズ、歌謡曲も好き。自分の本当のルーツを大事にしながら、これまでのイメージや商業性にとらわれない音楽がしたいね。憂歌団は幼馴なじみに誘われたから加入したバンド。成功したことは誇りに思うし、いい思い出だけど、死ぬ時は『憂歌団の花岡』じゃなく『花岡献治』として死にたいんですよ。これからはそれを実現するための時間かなと思っています」

 このインタビューの2日後、僕は招待を受けていたザ・タイガースの瞳みのる、森本タローのジョイントライブに花岡を誘い同行した。「花の首飾り」「君だけに愛を」…中学時代にあこがれたサウンドに包まれて、花岡の眼にはまるで十代の若者に戻ったかのような熱い興奮があふれていた。自身の原点、ルーツに戻った花岡の新たな創作活動に期待したい。

(中将タカノリ)

花岡献治(はなおか・けんじ)プロフィール

1953年7月27日生まれ。大阪府大阪市出身。1975年、憂歌団のベーシストとしてシングル「おそうじオバチャン」でデビュー。以後、数々の楽曲を発表し日本のブルースシーンを牽引する。1999年の憂歌団“冬眠”後はソロ活動のかたわら作曲家、音楽プロデューサーとしても活躍。現在は熊本市に在住し、自身の集大成となる創作活動を期す。

花岡献治事務局お問い合わせ先

hanaokakenji.official@gmail.com



週刊朝日  2023年2月3日号に加筆

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