著述家・本間
著述家・本間 龍さん(60)/1962年生まれ。元博報堂社員。広告が政治や社会に与える影響やメディアとの癒着、原発問題などを追及。著書に『東京五輪の大罪』など(photo 本人提供)
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 昨年夏の東京五輪・パラリンピックをめぐる汚職事件が次々と発覚している。五輪と広告会社との関係に詳しい著述家の本間龍さんに事件の背景を聞いた。AERA 2022年9月26日号の記事を紹介する。

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──五輪汚職事件の中心にいるのが、広告大手「電通」元専務で大会組織委員会元理事の高橋治之容疑者だ。大会スポンサーだった紳士服大手「AOKIホールディングス」から計5100万円を受け取った受託収賄容疑で東京地検特捜部に逮捕され、同じく大会スポンサーだった出版大手「KADOKAWA」からも計7600万円を受け取った疑いで再逮捕された。贈賄側もAOKIは青木拡憲前会長ら3人が、KADOKAWAは元専務らに続いて角川歴彦(つぐひこ)会長が14日に逮捕され、疑惑は底なしの様相だ。本間龍さんは「電通への過剰な依存」が問題の根幹だと指摘する。

「五輪の組織委は大会スポンサー獲得などの業務を電通に委託していましたが、要は丸投げです。組織委は東京都や官庁関係などからの寄せ集め部隊。広告関係の仕事のノウハウもなく、は餅屋でと任せっきり。チェック機能も働きません。一方で、電通にとって五輪はスポンサー企業からの管理進行料(手数料)などを得られる、最大の稼ぎどころ。まさに電通の電通による電通のためのオリンピックで、その先兵の一人が高橋元理事でした」

■電通1社の独占状況

──なぜ、AOKIやKADOKAWAは「表玄関」からスポンサーに名乗りを上げず、高橋容疑者に頼ったのか。カギはスポンサー料にあるという。五輪のスポンサーカテゴリーは国内では「ゴールドパートナー」「オフィシャルパートナー」「オフィシャルサポーター」の三つで、2社は最もスポンサー料の安いオフィシャルサポーター。通常10億~15億円程度と言われるが、AOKIのスポンサー料は5億円、KADOKAWAは2.8億円だったと報じられている。

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