「不当に安いんです。つまり『安くしてほしいから』高橋氏を通している。五輪はお金がいくらあっても足りないので、『スポンサーになりたいです』と普通に手を挙げればなれたはず。でも、10億、15億と言われると自分たちの企業規模からすると高すぎる。高橋氏を通してマージンを払ったとしても、まだ安かった。だから『裏口入学』を狙ったのでしょう」

「しかも、例えば『AOKIさんは5億で決まりました』と結果が組織委で報告されても、なぜ他の企業より安く5億円なのか?という追及はされない。追及したとしても、広告関係に素人の組織委は煙に巻かれて終わりでしょう。チェック機能が存在していない背景があります」

──五輪のスポンサー獲得業務を電通1社が独占している状況が、その背景の要因として大きいと、本間さんは言う。

「例えば『(広告大手の)博報堂と2社で獲得業務をやらせます』となれば、電通が20億円でスポンサーを獲得してきているのに博報堂が5億円だったら、『何でそんなに安く売るんだ』となりますよね。複数社なら、どうやって獲得したのか、なぜその金額なのかなどのチェックや情報開示が行われるようになる。『全部を独占的に電通に丸投げ』をやっている時点で、今回のような犯罪が起きる土壌はあったんです」

「高橋氏が広告大手『大広』から約1400万円を受け取りスポンサー獲得業務の一部を担う協力店に選ばれるように働きかけた話や、やはり大会スポンサーで東京地検特捜部の家宅捜索が入った駐車場サービス『パーク24』の獲得に協力店として関わったとして広告大手『ADKホールディングス』の件も報道されています。電通の独占ではないの?と思われるかもしれませんが、要は電通の手が回らないところで『お仕事してくれないかな』という形の、ただの下請けです。電通が独占していることに変わりはありません」

■子会社にも2千万円

──そもそもなぜ、高橋容疑者は大きな力を持てたのか。そこには電通内でのスポーツビジネスの存在の大きさが関係している。

サッカーのワールドカップと五輪を核としたスポーツビジネスは、いまや電通の中で確固たる稼ぎ頭。創成期から高橋氏は活躍しています。やはり電通が独占した2002年のサッカー日韓ワールドカップでも辣腕(らつわん)を振るい、FIFA(国際サッカー連盟)やIOC(国際オリンピック委員会)の中枢部とも電話でじかに話ができます。KADOKAWAが今回、コンサルタント契約を結んで7600万円を支払った『コモンズ2』代表の深見和政氏=受託収賄容疑で逮捕=も電通の雑誌局長までやった人ですが、『高橋さんみたいになりたい』と。高橋氏の電通内の評価は神様レベルかもしれません」

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